れぽてんの雑感

夏川椎菜さんと上田麗奈さんと小原好美さんのオタクで美也・エミリーPです

【天海春香学会 Vol.2】Cleaskyと「笑って!」~ミリオンライブ6thライブツアーのASカバーがもたらしたもの~

 みなさんこんにちは、れぽてんです。

 本日、天海春香学会運営2氏から『天海春香学会 Vol.2』の作品について、ネット上などに自由に掲載する許可が下りましたため、私が寄稿したものを、当時のまま、ここに投稿します(体裁などはブログ用にリライトしていますが、内容はそのままです)。クソ長いですが、タイトルは表題の通り。文章本編もクソ長いです。そして、長いなりのことは書けたのではないかと今でも思っています。美也Pとしての私のすべてをこの文章に込めました。

 

 もしこの文章で何かしらを感じてくださったら、ぜひ『天海春香学会 Vol.2』を購入してみてください。イラストもあれば、真面目な考察もふざけたものもあります。小説もあれば、詩もあります。一人ひとりのプロデューサーが、さまざまな角度から天海春香を見ています。どれも愛に溢れた作品ばかりです。買って損はしません。絶対に。

 

天海春香学会Vol.2 - 天海春香学会 - BOOTH

 

 前置きが長くなりましたが、楽しんでいただければ幸いです。それでは。

 

 

1.はじめに

 最初に断っておきます。私は春香Pではありません。美也Pです。宮尾美也のビジュアルに惹かれ、声に惹かれ、楽曲に惹かれ、そして彼女の生き様に惹かれたPです。「なぜ美也Pがこんなところに!?」と思われた方も少なくないでしょう。私をこの『天海春香学会誌 Vol.2』への寄稿に動かしたものは何か。そう、「笑って!」です。ミリオンライブ6thライブツアー(以下6th)でCleaskyが歌唱したこの曲をきっかけに、私は春香さんに興味を持ちました。そこからさまざまな縁がつながり、気が付けば今回、こうして筆を執っています。

 寄稿にあたり「どうせなら美也Pだからこそ書けるものを書きたい」と思いました。それならば、やはり「Cleaskyと『笑って!』」についてだろうと。天海春香学会誌だというのにCleaskyの話をメインに書いていいのか、と思わなくもないですが、春香さんの「笑って!」が端緒ということでここはひとつ、お許しを。

 最後に少し、私が考える「6thのASカバーがもたらしたもの」についても触れています。この文章を読んで「笑って!」という曲の新たな魅力に気付いたり、Cleaskyというユニットに少しでも興味を持ったりしていただければ幸いです。

 

2.「笑って!」歌詞考察 ~Cleaskyとの親和性~

 6thのASカバーで、なぜCleaskyに「笑って!」があてがわれたのか。それを考えるにあたり絶対に外せないのは、CDのドラマパートの内容と「笑って!」の歌詞の親和性です。6thでの歌い分けにも注目して、一つひとつ見ていきましょう。

 

 

   くり返す毎日は 止まること知らないから

   悩んだり泣いた時間も 通りすぎてゆく

 

   楽しいことだけじゃないけど 私がんばってるからね

 

  「笑って!」のメール くじけそうなとき いつも読み返すよ

   今はときどきね週末の報告 それよりも声が聞きたい、会いたいよ……

 

 

 1番を歌っているのはエレナ(角元明日香さん)です。つまりここは、エレナの心情を語ったものになっているというわけです。「悩んだり泣いた時間も 通りすぎてゆく」、「楽しいことだけじゃないけど 私がんばってるからね」の歌詞はどことなくマイナスな感情を抱いていることを想起させます。

 MILLION THE@TER GENERATION 06(以下MTG 06)収録のドラマパート『焼きかけフィルム』では、ミリオン島から東京に帰り1カ月、美也と離れ離れになった後のエレナが描かれていますが、その中で、美也からの手紙を受け取ったエレナが涙を流しながら「寂しいよ……会いたいよ、美也……」と内に秘めてきた感情を吐露するシーンがあります(名シーンなのでぜひMTG 06を買って聞いてください)。1番の歌詞は全体的にエレナの心境とリンクしていますが、この部分はまさに「今はときどきね週末の報告 それよりも声が聞きたい、会いたいよ……」でしょう。

 

 

   雨の中 急いでる君を偶然見かけた

   むずかしい顔してたから 声かけられずに

 

   約束なんかしてないけど 明日会いにゆこうかな

 

   たくさんの出会い 卒業してから もう2年経つのね

   思い出は薄れないけれど増えない ここに止まっていたら何も変わらない

 

 

 2番です。ここはすべて美也(桐谷蝶々さん)が歌います。美也の心情が歌われていると捉えることができますが、確かに「約束なんかしてないけど 明日会いにゆこうかな」、「ここに止まっていたら何も変わらない」といったポジティブな、現状を変えるべく動こうとしている様が描かれています。実際にドラマでも、美也は一貫して前向きな子として描写されています。

 

 

   突然の着信「昨日見かけたよ!」って(エレナ)

   これもまた運命だね? 勇気をくれた(美也)

 

 

 Cleaskyを考えるうえで重要な要素の一つに「手紙」があります。「笑って!」ではメールや着信ですが、本質は同じです。手紙も、メールも、あるいは電話も、遠くにいる相手に言葉や思いを伝えるツールです。「突然の着信『昨日見かけたよ!』って」は、それに準ずるようなポジティブな内容(例えば「会いたい」といったような内容)の手紙が、美也からエレナの元に届いたということで、「これもまた運命だね? 勇気をくれた」は、2番で「明日会いにゆこうかな」と美也が少しぼかして言っていた箇所へのアンサーかなと思います。手紙を書くにあたって実際に言葉にしてみて、そして手紙を出して、「もうやるしかない」と勇気をもらった、そんな解釈ができるかと思います。

 

 

   大切な思い出 しまい込んでた 大事にし過ぎてた(エレナ)

 

 

 この歌詞はまさにこの通りですね。エレナは、東京に戻るとき美也からもらった映画のマスター盤を1カ月間見ることなく、机の引き出しに「しまい込んで」いました。大切な思い出も、大事にし過ぎることでそれが枷になり、先に進めなくなることもある。ただ、ここで注目すべきは「た」と過去形になっているところ。「決別」ほど強い言葉ではないでしょうが、想い出にしがみつくだけなのはもうやめにしようとの思いが読み取れます。

 少し話は逸れますが、「笑って!」という曲の魅力の一つがここにあると私は思っています。一言でいえば物語性です。およそ5分の中で、後ろ向きから徐々に前向きに移り変わっていく心の内を見事に表現しているのです。「笑って!」を聞くと、歌というのが言葉であり、物語であるということを強く意識させられます。

 

 

   今日という未来は開き続けるから(美也)

 

 

 美也もミリオン島で、エレナがいない日々に寂しさを覚えていたのかもしれません。それを口にはしないでしょうが。でも、寂しいと思っているだけでは何も変わらない。美也もまた決意します。

 

 

   新しい出来事きっと待っている(エレナ&美也)

 

 

 ここでようやくです。ここまで声を重ねることなく、それぞれソロで歌っていたエレナと美也が、やっと声を合わせて歌います。2人の決意と思いが重なります。パート分け、本当にもうこれしかないんですよね。1番は美也が歌っても、2人で歌っても違和感があるし、2番も然り。6thを見越してドラマパートを練ったのか、あるいは6thをやるとなって合う曲を見つけてきたのか、どちらかは分かりませんが、いずれにしてもCleaskyには「笑って!」しかなかったのだと、そう思います。

 また、後述しますが、ライブ円盤を持っている方はこの部分の映像表現にも注目していただきたいです。

 

 

   「笑って!」のメール 忙しそうな 君にも送るね

   ほんとに伝えたい事はひとつだけ 目を見て言いたいから、会いにゆきます

 

 

 そう、ここ……ここを語りたかった……。「ほんとに伝えたい事はひとつだけ 目を見て言いたいから、会いにゆきます」です。最高の歌詞すぎる。ここは歌詞だけでなく、6thのステージと併せて考えなければならない部分なので、考察は次の章に譲りたいと思います。

 

3.6thの矛盾とその答え ~Cleaskyの物語の完成形~

 この章では、6thでの「笑って!」の演出を掘り下げていきたいと思います。というのも、あそこで表現された世界は一体いつの話なのか、疑問に思いませんか? 最初私は「笑って!」を「ドラマパート内にあった空白の1カ月の双方の思いを補完した曲かな」と思っていたのですが、そうだとするとおかしな箇所が出てくるのです。MTG 06と6thで描かれた物語の矛盾を端緒に、論を進めていきたいと思います。

 

3.1.矛盾が指し示すもの

 MTG 06では、美也がエレナに会いに行きます。東京に戻ってから1カ月経った頃、エレナは美也から手紙を受け取り、その直後、張本人が来訪します。驚くエレナに、美也は「手紙に『会いに行く』と書いた」と言います。実際にはその手紙は出されていなかったわけですが……。このあたりは楽曲「虹色letters」の「未送信letter」、「宛先ないletter」に関わる部分でして、こちらもまた大変考察しがいがあります。話が逸れました。逸れたついでにもう一つ言えば、「山手線の終着駅が気になった」という美也の発言の真意も解釈が分かれるところですよね。

 閑話休題。重要なのは「美也がエレナに会いに行った」という点です。一方、6thではどうだったでしょうか。手紙を書いていたのはエレナで、実際に美也に会いに行ったのもエレナです(この部分も、どちらかが言い出してどこかで待ち合わせしたのか、あるいはエレナのサプライズだったのかとか、待ち合わせしたとしたらその場所は東京だったのかミリオン島だったのかなど、いろいろと考察しがいはありそうですが、ひとまず置いておきます)。ここから、6thのあのステージはMTG 06内の話ではなく、その後を描いたものだったと考えることができます。

 

3.2.以下、考察という名の妄想

 6thの「笑って!」の1番では、教室で手紙を書くエレナが描写されます。そして、美也もエレナも制服です。「笑って!」の「卒業してから もう2年経つのね」という歌詞をそのまま当てはめるよりかは、要は離れ離れになってから、それくらい長く感じられるほどの時間が経ったと考える方が自然かと思います。ミリオン島と東京は、フェリーが1週間に1度しか来ないようですし、郵便物も東京に届くのにやはり1週間かかるようです。きっと交通費も馬鹿にならないでしょう。手紙でのやり取りは離れてからもずっと続けていたけれど、なかなか会えるような時間もつくれず仕舞いだったのだと思います。それでも、やっと落ち着いてきて、美也の方から「会いたい」という手紙を出した。それを受け取ったエレナは了承の返事をする。これもおそらく手紙で。そこで「ほんとに伝えたい事はひとつだけ 目を見て言いたいから、会いにゆきます」ですよ。エレナは美也と再会したとき手紙を渡します。それこそ彼女が「ほんとに伝えたい事」が書かれたものだったのでしょう。目を見て言いたかったんです。会いに行きたかったんです。美也もまた、笑顔でそれに応えます(このあたりの一連の流れ、特に、美也がいたずらっぽくエレナに傘を差し出すシーンは本当に美しいです)。

 MTG 06だけでも、話としては完結していました。しかし「笑って!」という曲がより2人の気持ちを掘り下げ、物語に深みを与えたことは間違いないでしょう。

 

3.3.頼むから6thの円盤を見てくれ

 もう一つ、第2章で後述すると書いた6th円盤の「笑って!」の映像表現についてです。「新しい出来事きっと待っている」の部分ですが、ここで初めて、2人が明確に同じ映像に納まります。仙台DAY2のオーディオコメンタリーで角元さんが「距離は離れているけど、心の距離はこんな感じだよっていう演出ですね」と言っているのですが、本当にその通りなんです。この演出こそ6thの「笑って!」のハイライトの一つだと私は思っています。他にも、2人の表情・歌い方や小道具のこだわり、指の先まで血の通った芝居など、挙げればキリがありません。何回でも見る価値のある、そして何度でも見たくなるステージです。

 映像表現について、もう一カ所だけ触れさせてください。「目を見て言いたいから、会いにゆきます」の部分です。特に仙台DAY1とSSADAY1なのですが、この箇所の映像、2人が「目を合わせて」いるんですよね。映像で「目を見て言いたいから」という2人の気持ちを表現しているのです。こういった歌詞とリンクしたカメラワークや映像表現も、彼女たちの物語に深みを与える役目を担っているのだと思います。

 仙台DAY1とDAY2、そしてSSADAY1。Cleaskyの「笑って!」が披露されたのはこの3回ですが、3回とも違うステージになっています。特にSSA公演は、仙台とはまったく別物と言っていい仕上がりになっています。ステージング自体は同じなのですが、歌い方だったり、2人の表情だったりが違うのです。きっと、「笑って!」という曲への向き合い方や込めた思いなんかも違ったのではないかと思います。このあたりは、実際に円盤を見て確かめていただきたい部分です。

 

4.おわりに

 最後に、6thでのASカバーがもたらしたものについて、少し触れたいと思います。

 あの試みに賛否があったのは知っているつもりです。「いやその曲はあの流れ、あのタイミングであの子が歌うからこそ意味があったのに」と、そういう気持ちになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。侵されがたい聖域に土足で上がられた、そんな感覚。しかしながら、6thを作り上げたスタッフの方々がそのことを承知していなかったはずはないのです。カバーというのがどれだけ重く、覚悟のいることなのか、演者の方々も理解していなかったわけはないのです。そしてそのことは、ステージを見れば、MCを聞けば、伝わってきます。この部分に、私たちは最大限の敬意を払うべきだと、そう思います。

 そして、私のような6thがASの入り口になったPがいることもどうか知っていてほしいのです。私は6thでASカバーをあの形でやってくれていなかったら、おそらくASの曲を聞こうとは思わなかった。アニマスも見ていなかったと思います。春香さんに興味を持つこともきっとなかったでしょう。彼女のことは漠然と、アイマスのセンターと思っているだけでそれ以上知ろうとはならなかった。6thのあれが、私の入り口になったのです。おそらくこんなPは私だけではないはずです。

 もう一つ、6thのASカバーがもたらしたものがあります。ミリオンスターズ39人があのようにカバーしたことによって、曲に新たな世界観や解釈が生まれたことです。Cleaskyの「笑って!」やSTAR ELEMENTSの「私はアイドル♡」、EScapeの「LOST」などなど、そこにはまた新しい物語が紡がれていました。「なぜあのユニットにあの曲があてがわれたのか」を私たちは考察します。そこに大きな意味があります。その曲を知らなかった人たちが曲に出会って、考える。曲というのはそうやって成長し、命が吹き込まれていくのだと思います。

 こういった点において、6thのASカバーはとてつもない価値があったのです。少なくとも、私はそう考えています。

 

5.続・おわりに

 ここまで、春香さんの楽曲「笑って!」を端緒に、その歌詞とCleaskyの親和性や6thでのステージングについてなど、さまざまなことを語らせていただきました。お読みくださった方は本当にありがとうございました。長いうえに読みづらかったことでしょう。そして、天海春香学会誌のはずなのに、肝心の春香さんについては何一つ語っていないこの文章、どう思ったでしょうか。ええ、書いた私自身も、どうしてこんなことになってしまったのだろうと思っています。しかしながら、伝えたかったこと、吐き出したかった感情は出し切ることができたかと思っています。次があれば、今度こそ春香さんについてじっくり書きたいです。

 末筆ながら、このような場を設けてくださった運営のご両名、スタントンさんとそにっぴーさんに最大限の感謝を申し上げます。また、春香Pでもなんでもない私を受け入れてくださり、本当にありがとうございます。そして、今回Vol. 2とのことで、Vol. 1があったからこその場ということも重々承知しております次第です。制作に関わられたすべての方々に深くお辞儀をしつつ、謝辞とさせていただきます。